12月26日に政府の事故調査・検証委員会が中間報告を発表した。

すでに、ニュースでもずいぶん取り上げられているし、
昨日はNHKでも報告に基づいたNスペ番組をやっていた。
>「絶対安全」をうたいながら、世界最悪レベルの放射能汚染を引き起こし、今なお多くの人々に避難生活を強いている福島第一原発事故。その原因と背景を半年以上にわたって探ってきた政府の事故調査・検証委員会が、12月26日中間報告を発表した。現地調査や数百人へのヒヤリングなどをもとにした全700ページ以上にわたる報告では、様々な問題点や疑問点の多くに関して、政府事故調としての調査結果と見解を示しているが、特に東京電力や政府機関の事後の対応について多くの問題点を指摘するなど、踏み込んだ内容になっている。NHKスペシャルでは、事故調委員長の畑村洋太郎氏と、委員の柳田邦男氏を急遽スタジオに迎え、事故調中間報告は一体何を明らかにし、国民の疑問にどこまで答えるものになっているのかを検証してゆく。

これ少しだけ見たけど、本文を読むほうが面白かったな。

で、報告書に対する批判もすでにあちこちで出ている。
代表的なのは、この人だろう。

小出裕章が語る、政府事故調査委員会中間報告「個人の責任を問わないで済むなんてことが私にとっては想像もできない」12/26

テレビの書き起こしらしいけど、偉いねネット住人は。
こういう労力を惜しまない仕事を、新聞も雑誌もしてない気がする。

この中で私が注目したのは、畑村洋太郎先生が委員長であることを指摘し
>小出「まあそうですけど、ま、委員の方々がですね、テクニカルなことに関しては、今聴いていただいたように専門的知識をお持ちでないわけだし。結局ですから制度的にどうであって、連絡体制がどうであった、ま、そういうところしか……興味がなかったというか明らかにする力がなかったということだと思います」

と小出さんが言っている所で、この点が評価が大きく別れるところなのだろうと思う。

私は、この事故が仕組みの問題であることを丁寧に指摘している報告書だと感じた。
東電の中の原発組と本社の間の連絡不足、認識不足や、
経産省保安院の役立たずな部分、
今回の事故を混乱させた官邸の異常なまでの介入とマニュアルを守らなかった問題など
「事故そのもの」以外は、実によく解明していると思う。

そして、事故そのものを解明していないことを指摘するには、
その前提として、まだ放射線量が高すぎて炉心に近づけないという点を
どの程度勘案するかが重要ではないだろうか。

科学者の良いところであり、一般の人から見るとまだるこしいところは
「現場を見ないとなんとも言えない」というところで、
「破砕された状況そのもの」「溶融している状況そのもの」を見ないと
結論めいたことを言わないところだろうと思う。

そこは、この中間報告ではなく、最終報告に期待したい。

新聞記事としては毎日が連続して取り上げている

福島第1原発:東電ミス連鎖で深刻化 事故調中間報告書@毎日JP
>中間報告書は本編507ページと資料編212ページで構成。検証委のウェブ(http://icanps.go.jp/)で公表し、来年1月末まで意見を募集する。

東日本大震災:福島第1原発事故 東電ミス連鎖で深刻化 政府の機能、不全--政府事故調中間報告@毎日JP
>炉心溶融を防ぐための冷却装置への東電の対応に問題があったと認定し、「極めて遺憾」と指摘。政府の対策本部が機能不全に陥っていたことにも言及した。深刻な被害にいたった背景として、自然災害と原発事故の複合災害という視点がなく、政府や東電の備えの欠如があったと分析した。

福島第1原発:安全文化を軽視 事故調中間報告書@毎日JP
>安全文化とは、反省しながら、最新知見を取り入れ安全を常に求める姿勢をいう。だが東電の場合、08年に福島第1原発に15メートル超の津波が押し寄せる可能性を予測したが、コストのかかる防潮堤の設置などの対策を進めなかった。事故発生直後も「想定外の津波が原因」という言葉を口にしている。これに対し、26日、記者会見した畑村洋太郎委員長は「一度想定を決めると、想定外を考えなくなる」と指摘、被害の甚大さを考慮すれば確率が低くても想定外を無視しない大切さを説いている。

こうした記事からでも断片はわかるけど、やはりここは日本国民として
概要でいいから、全文読んでみたほうがいいと思う。
A4で16ページしか無いし、平易な言葉で書かれていて、
いわゆるガチガチの報告書調ではない。

概要(pdf)

そして、毎日新聞の社説(社説:原発事故調 最終に向け踏み込め)などでも言うように、
さらに踏み込んだ最終報告書を書いてもらうためにも意見を寄せてはどうだろうか。

HPによれば
>委員会の活動においては、国民の皆様の声を参考にさせていただきます。ご意見等は、次のメールアドレスまでお願いいたします。
E-Mail:iinkai.goiken@cas.go.jp


とのことなので、このメールアドレスに、感想やら、最終報告への期待を送るといいのではないか。
自分のサイトアドレスを送ってブログを読めとか言っても、多分やらないだろうから、
簡潔に意見を送ったほうがいいと思う。

そういう「市民活動」をしないで、上がったものだけを論っても仕方がない。
彼らは、善意でかなり良い仕事をしている。
そこは評価した上で、それでも斬り込み切れてないところを追求してはどうか。


そうは言っても、私は、毎日新聞社説が言うような
>米スペースシャトル「チャレンジャー」事故の調査委では物理学者ファインマンが組織の論理にとらわれない独自の見解を報告に付け、広く受け入れられた。そんなことも念頭に置いて検証を進めてほしい。

というような報告を実は、この政府事故調には期待していない。
なぜならば、政府自体がこの事件の犯人の一部だからだ。
東電の社内事故調同様に、政府事故調にはある甘さがあるに違いない。

だが、国会事故調が控えている。

東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法

という法律に基づいて国会に設置された機関で、
こちらはそうそうたる科学者を含め、強面がズラリと並んでいる。

wikipediaによる

委員長
黒川清(医学博士、東京大学名誉教授、元日本学術会議会長)
委員
石橋克彦(地震学者、神戸大学名誉教授)
大島賢三(独立行政法人国際協力機構顧問、元国際連合大使)
崎山比早子(医学博士、元放射線医学総合研究所主任研究官)
櫻井正史(弁護士、元名古屋高等検察庁検事長、元防衛省防衛監察監)
田中耕一(化学者、株式会社島津製作所フェロー)
田中三彦(科学ジャーナリスト)
野村修也(中央大学大学院法務研究科教授、弁護士)
蜂須賀禮子(福島県大熊町商工会会長)
横山禎徳(社会システム・デザイナー、東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム企画・推進責任者)

政府事故調(Wikipedia)と比べると、委員の人数が少ないが破壊力は国会事故調のほうが上だろう。

こちらでファインマンのような仕事を黒川先生にしていただきたいと切に願う。