一部のマニアの耳目を集めていた事件の判決が出た。

競馬配当の所得を申告せず…元会社員に有罪判決@YOL

競馬の馬券配当で得た約29億円の所得を申告しなかったとして所得税法違反(単純無申告)に問われた元会社員の男性(39)に対し、大阪地裁は23日、懲役2月・執行猶予2年(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。



これが、通信社からだと見出しが異なる。

外れ馬券、経費と認める=元会社員に有罪判決-所得税法違反事件・大阪地裁@時事ドットコム

 競馬の予想ソフトを使って勝馬投票券(馬券)を購入し、多額の利益を得たのに確定申告しなかったとして、所得税法違反(無申告)罪に問われた大阪市の元会社員(39)の判決が23日、大阪地裁であった。西田真基裁判長は最大の争点だった外れ馬券の購入費について、「経費に当たる」と認めた上で、「申告義務があることは認識していた」として、元会社員に懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡した。



見出しだけではなく、書き出しで何を書いているかで、かなり印象が異なる。


読売は「29億円の所得を申告しなかった」事件の「有罪判決」という書き方で、この事件の争点を最初に持ってきていないのに対して、時事通信は「多額の利益」と金額を出さず、しかも「最大の争点」を明示している。

この裁判は、読売新聞が書いたような「所得逃れ」ではなく、時事通信が書くように「外れ馬券が経費かどうか」という裁判だろう。

実は、読売新聞は、書き出しに続けて、次の段落で

所得から控除できる「必要経費」の範囲が争点となり、検察側が「当たり馬券の購入費しか認められない」と主張したのに対し、弁護側は「膨大な外れ馬券の購入費も必要経費と認め、純粋な利益だけに課税すべきだ」と反論したうえで、無罪を主張していた。検察側は、男性が申告しなかった税金額を約5億7000万円としていたが、判決は約計5200万円と認定しており、弁護側の主張の一部を採用したとみられる。



と争点を明示しており、しかも判決の税金額を書くことで、経費と認めたことを「一部採用した」と記す。

さらに、読売新聞は、裁判長の言葉を載せておらず、判決理由をはっきり書いていない。
時事通信によれば、

西田裁判長は「一般的には競馬は趣味、娯楽であり、馬券購入費は楽しみ賃で経費に含まれない」と位置付けた。その上で、元会社員の馬券購入は「継続的、反復的でほぼ全レースにわたっており、利益を得るための資産運用としてみることができる」と述べ、元会社員の利益は雑所得に当たるとした。



ということで、一般的には経費じゃないけど、この人は尋常じゃない金の突っ込み方をしていて、それはもう「楽しみ」じゃなくて「資産運用」だから、経費にしましょう、と言っているわけだ。

なぜ、読売新聞は、こんな大事なことを書かないのだろう。
理由として考えられるのは、読売新聞は、現場に行ってないのだろう、ということだ。
裁判に立ち会わず、流れてきた資料だけで書いているのだろう。

時事通信は、判決を見ているから明確に書ける。

でも、この裁判は、実に面白い裁判だし、確実にニュースバリューがある。
私は、mixiニュースで知ったわけだし、ネット界隈にも流れるだろう。
その判決を見に行った時事通信と、見に行かなかっただろう読売新聞。

同じ判決を、他のメディアはどう発信しているのだろう?

競馬所得「脱税」で有罪判決 外れ馬券は経費認定 ー元会社員に大阪地裁@日経新聞

競馬の払戻金を一切申告せず、約5億7千万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた元会社員の男(39)の判決公判で、大阪地裁(西田真基裁判長)は23日、弁護側の主張通り、外れ馬券も含めたすべての馬券代を経費と認めたうえで、男に懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡した。検察側は「当たり馬券代のみが経費」と主張していた。


読売と似た臭がする。

判決が出る前の日からネットでは注目されていたようだ。

外れ馬券は「必要経費」か? 巨額「競馬脱税事件」の判決の行方は?@ITメディア(弁護士ドットコムの流用)

この記事中の弁護士さんは「雑所得になる」と予測し、結果、そのとおりになった。
なかなか鋭いのね、という感じがする。

人ごとではないのは、馬券購入者が主に読むであろうスポーツ新聞。
こちらも前の日から、この裁判に注目していたようだ。

ハズレ馬券は必要経費? 気になる司法判断「法が時代からズレている」との指摘も@ZAKZAK

23日、競馬ファン注目のトピックスが2つ。第80回日本ダービーの確定と、競馬で得た所得を申告しなかったとして所得税法違反に問われた元会社員男性(39)に対する大阪地裁での判決公判だ。「ハズレ馬券は必要経費か」の司法判断に関心が高まる。



夕刊フジやサンスポを持つ産経グループですから注目してますね。
さらに、やはり東スポ。

ダービーウイークに恐怖の判決@東スポweb

外れ馬券の購入費用は経費として認められるか――。競馬で得た所得を申告しなかったとして、所得税法違反の罪に問われた元会社員の男性(39)に大阪地裁が23日、判決を言い渡す。初の司法判断とみられ、競馬ファンの関心が高まっている。



なるほど、ダービーウィークに司法判断が出たわけか。
それは、かなりのポイントですな。

そして判決を伝えるスポーツ新聞。

初の司法判断「外れ馬券は必要経費」 元会社員、脱税は有罪@スポニチ・アネックス

競馬の払戻金への課税で、外れ馬券が経費と認められるかどうかが争われた刑事裁判の判決で、大阪地裁(西田真基裁判長)は23日、「必要経費に含まれる」との判断を示した。その上で、2009年までの3年間に5億7千万円を脱税したとして所得税法違反(単純無申告)に問われた大阪市の元会社員の男性(39)に懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。



スポニチ・アネックスでは、「競馬脱税事件」裁判についてのアンケートまで行う取り組みよう。


メディアの性格なのか、この判決の捉え様の空気感の違いが面白い。

ただ、馬券購入が経費になると言っているのではなく、資産運用と認められるくらい継続的に馬券を買わなきゃダメらしいので、そのへんはお間違えなく。

そうなると、何より井崎脩五郎さんの今後の納税額が気になってくるところだなあ。
あれは芸で外しているんだろうから、経費にしないといけないんじゃないですかね?

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(井崎脩五郎さん)