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福島第一原発事故に関しては、4つの事故調査委員会が立ち上がり、それぞれに報告書が提出されています。

国会事故調Facebookページ
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民間事故調
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政府事故調
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東電事故調
(ウェブサイトからダウンロード出来ます)

でも、それを全部読むわけにも行かず、正直、誰か比較してくれないかなと思っていました。

内心期待していたとおり、やはり日本科学技術ジャーナリスト会議が、やってくれました。

それがまず水曜社から1月に発刊された、こちら
4つの「原発事故調」を比較・検証するー福島原発事故 13のなぜ?4つの「原発事故調」を比較・検証するー福島原発事故 13のなぜ?
柴田鉄治 横山裕道 堤佳辰 高木靭生 荒川文生 桶田敦 林衛 林勝彦 小出五郎 日本科学技術ジャーナリスト会議

水曜社 2012-12-07
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もう一冊が化学同人社から3月に出た、こちら
徹底検証!福島原発事故 何が問題だったのか: 4事故調報告書の比較分析から見えてきたこと徹底検証!福島原発事故 何が問題だったのか: 4事故調報告書の比較分析から見えてきたこと
日本科学技術ジャーナリスト会議

化学同人 2013-03-07
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なぜ2冊も出るのか。どう違うのか。

この二冊も比較して読まないといけないのか?

比較しますと、筆者と編集の構成が、微妙に異なります。

水曜社版は、日本科学技術ジャーナリスト会議 著

執筆者(順不同)
柴田鉄治(元朝日新聞科学部長)
横山裕道(淑徳大学客員教授)
堤佳辰(元日本経済新聞論説委員)
高木靭生(元日経サイエンス編集長)
荒川文生(地球技術研究所)
桶田敦(TBSテレビ報道局次長)
林 衛(富山大学人間発達科学部)
林勝彦(元NHKプロデューサー)
小出五郎(元NHK解説委員)
※所属は本書刊行時のものです。

目次

本書で再検証する13の疑問
Q.00福島第1原発事故の全体像・推移と4事故調
Q.01 地震か津波か? なぜ直接的な原因が不明なのか?
Q.02 ベントは、なぜ遅れたのか?
Q.03 メルトダウンの真相は? なぜ発表は迷走したのか?
Q.04 事故処理のリーダーは、なぜ決まらなかったのか?
Q.05 東電の「全員撤退」があったか、なぜはっきりしないのか?
Q.06 テレビ会議の映像に、なぜ音声がないのか?
Q.07 なぜ「原子力ムラ」は温存されたのか?
Q.08 なぜ個人の責任追及がないのか?
Q.09 住民への情報伝達は、なぜ遅れたのか?
Q.09 + 放射線被曝情報の誤解と混乱は、なぜ生じたか?
Q.10 なぜ核燃料サイクル問題の検証がないのか?
Q.11 原子力規制への提言が報告書によって違うのは、なぜか?
Q.12 なぜ4報告書がこのまま忘れ去られようとしているのか?
Q.13 なぜ4報告書には「倫理」の視点が欠けているのか?

13のQに基づいて進められ、B5判並製 152頁。
急いで執筆された感じと、編集的にも書いたものがそのまま掲載され、巻末に語注等がありません。

化学同人社版は、日本科学技術ジャーナリスト会議 編。
執筆者は、上記と重なる部分もありますが
柴田鉄治(元朝日新聞科学部長)
横山裕道(淑徳大学客員教授)
小出五郎(元NHK解説委員)
高木靭生(元日経サイエンス編集長)

の4人が編集委員兼執筆者で、他に
堤佳辰(元日本経済新聞論説委員)
荒川文生(地球技術研究所)
林勝彦(元NHKプロデューサー)

が共通で、新しく

藤田貢崇(法政大学教授)
初田竜也(サイエンス・ライター)

が加わっています。

目次

◆プロローグ「われわれはなぜ再検証するのか」

◆第Ⅰ部 原発事故前の安全対策
東電は貞観地震による津波の警告を軽視したか/大津波は本当に「想定外」だったのか/バックチェックは適切に実施されていたか/安全審査・規制に落ち度はなかったか/シビアアクシデント対策は講じられていたか/絶対安全神話はどのようにして生まれたか/原子力ムラの存在をどのように捉えたか

◆第Ⅱ部 原発事故の発生・進展
地震動は事故の深刻化に影響しなかったのか/事故の直接的原因は何であったか/全電源喪失はなぜ起こったのか/水素爆発はなぜ起こったのか,水蒸気爆発はなかったのか/使用済み燃料プールで何が起こっていたのか/圧力容器と格納容器で何が起こったのか/メルトダウンはなぜ防げなかったのか
オフサイトセンターはなぜ機能しなかったのか/1~3号機で事故の進展が違ったのはなぜか/福島第一原発2号機で何が起こったのか/福島第二,女川,東海第二原発はなぜ事故をまぬがれたか/原子炉のターンキー契約導入に問題はなかったのか/事故評価レベル7がなぜすぐ出なかったのか

◆第Ⅲ部 原発事故への対応
東電,政府の意思決定は正しかったか/菅首相の現地視察が東電の対応を遅らせたか/果たして注水作業は中断されたのか/海水注入はなぜ遅れたか/緊急時のIC操作は妥当であったか/ベント作業は正しく実施されたか/汚染水処理に問題はなかったのか/吉田所長をはじめ現場の人たちはどう動いたか/東電の「全面撤退」は本当になかったのか/東電と政府の情報はなぜ信頼されなかったか/事故の情報共有はなぜうまくいかなかったか/物資調達の遅れが事故を深刻化させた原因か/放射線の校庭利用基準値は妥当であったか/官邸は過剰介入したのか/原子力安全・保安院はなぜ機能しなかったのか/米国は何を求め,日本はどう対応したのか

◆第Ⅳ部 原発事故後の住民への対応
政府の避難指示は適切だったか/住民は避難指示をどう受け止めたか/避難区域の決定は正しかったか/なぜSPEEDIの情報を使わなかったのか/放射線モニタリングのデータは信用に足るものか/防災計画・防災対策は適切に行われていたか/緊急時対応の混乱はなぜ起こったのか/低線量被ばくの人体に対する影響をどう見たか/ヨウ素剤の配布,服用がなぜ円滑に実施されなかったのか/放射性セシウムの人体・環境への影響をどう見たか/放射線による健康被害の対策は講じられていたか/原発作業員の被ばくはどの程度深刻だったのか/放射線汚染食品の検査はうまく実施されたか/除染処理はこのままでよいのか/風評被害を防ぐ対策は適切に講じられていたか

◆第Ⅴ部 原発事故と組織・制度
事故処理のリーダーは誰だったのか/原子力規制当局の独立性に問題はなかったのか/福島原発事故の責任者は一体誰か/今回の原発事故は「天災」か「人災」か/「最悪のシナリオ」をつくった理由は何か/事故調の対策と提言は十分と言えるか

◆エピローグ【座談会】4事故調報告書の徹底分析から見えてきたこと

<資料> 事故調報告書を読み解くために
事故前の福島第一原発の様子と施設配置図/福島原発事故関連の原子力発電所 設備・被害比較表/福島第一原発1号機のマークⅠ型原子炉の概略図/福島第一原発1号機の非常用復水器(IC)とベント設備/福島第一原発2号機のブローアウトパネルとパネルが開く仕組み/福島第一原発80 km圏内のセシウムによる汚染状況/放射線の発がんリスクの各モデル/年齢・性別による放射線の影響

編集ポイントは以下のとおり。

■構成上の特色:疑問が残されている重要な57テーマを検証項目としてあらい出し,各項目とも「問題の背景」(1頁),「4事故調の報告」(2頁),「科学ジャーナリストによる分析」(1頁)による4頁構成としている.事故調報告自体は膨大な分量があり,読みこなすのは困難だが,本書はそれらのポイントを簡潔にまとめ,関心のあるどの項目からでも読み進められるようにしている.



化学同人社という出版社の力量を十分に発揮したものとなっています。

自主的に検証を進めていた中で出版企画が持ち込まれ、水曜社からの出版に応じて、検証内容を書き連ねたものを出したものの、本としての出来に満足いかず、さらに詳しいものを出したくなって化学同人社からも出したという感じでしょうか。

本としての出来はたしかに化学同人社判のほうが良いのですが、内容をじっくり考えたい人には、水曜社版をおすすめします。

大枠をポイントに沿って掴みたい人は化学同人社判、資料として読み込みたい人は水曜社版とも言えます。

本のサイズにも体裁にも構成にも明らかに違いが見えて、この2つを比較するのも本好きにはまた面白い作業かもしれません。

電子書籍にならないかなという気もしています。
水曜社版はすぐ出来そうな気もしますが。

4つの「原発事故調」を比較・検証するー福島原発事故 13のなぜ?4つの「原発事故調」を比較・検証するー福島原発事故 13のなぜ?
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